2020年5月31日日曜日

【線は、僕を描く】そこに、自分が表れる



ずっと、気になっていた。
水墨画を題材にした小説「線は、僕を描く」

水墨画の画家たちは、どのように作品をつくっているのか。
紙と墨を使って、何を表現しようとしているのか。
何を描いて、何を描かないか。

水墨画の世界について、知ることができ、
どこかで作品が展示されていたら、観に行きたいと思う。

この作品が扱っているのは、水墨画だけど、
書道でも、文芸でも、絵画でも、もしかしたらスポーツでも、
同じことがいえるのかもしれない。

人が何かを表現しようとするとき、
その表現の中に、「自分」が表れている。

一輪の花を描いた時、
文章をまとめた時、
100mを走った時、

一枚の紙の上に、文章の行間に、懸命に走る姿に、
どこかに「自分」が表れているものだと思う。

「線は、僕を描く」を読むと、自分を表現できる何かと出会えることは、
幸せなことなんだと、改めて思う。


線は、僕を描く

2020年5月26日火曜日

病んでいる人が健やかで、健康だと思っている人が病んでいるかもしれない



「共生」という言葉、
「ともに生きる」という意味ですが、それって、どういうことなのか。
改めて、考えさせられた。

精神を病んでいる人=患者 と一般的には思われるけれど、
本当は、精神を病んでいる人とされる人が健やかで、
精神を病んでいないと思っている人が、実は、病んでいるのかもしれない。

山本先生は、患者さんに教えられる、学ばせてもらっているのだと言う。
頭の中で、そう思っているだけではなく
心の底から、そう思っているのだろうと、映画を見て思う。


冒頭、タイトルの「精神0」の文字が画面に表されるまでの時間に、
涙が、ぽろり。

映画の終わり、冒頭に流した涙とは、また別の感情が湧き上がって、涙がぽろぽろ。

途中で、何度も、クスクス笑ったのだけど。
最初と最後で泣かされた映画でした。


2020年5月24日日曜日

コロナ禍の「禍」と、文字禍の「禍」




最近、よく目にする言葉「コロナ禍」、これまでなかった新しい単語ですね。

「禍」は、よくないこと、不幸を引き起こす原因、災難を意味していて、

新型コロナウイルスによる災い=コロナ禍 です。

中島敦の短編小説に「文字禍」という作品があることを、最近知り、

文字によってもたらされる災い????

それは、どういうものなのだろう?

なぜ、文字が災いするんだろう?

と思って、さっそく読んでみました。

なかなか、すごい。

この作品、
「文字」があることによって、「人」は幸せになれるのか?
という問いを、投げかけてくる。

今、「新型コロナウイルス」は、災いの原因と位置付けられて、
それがあることで、様々な困難が生じているとされている。
だから「コロナ禍」だ。

でも、「文字」は、何かを意味するものであり、
知識をもたらすものであり、
それをもとに文化や科学が発展してきたものだと思う。
多くの人にとって、「文字」は、災いの原因とはされていない。
それが、この作品では、災いをもたらすものとして描かれ、「文字禍」になっている。

そして、
「文字」は、災いをもたらすものになりうるんだと、思わされる。

読み終えた後、私が
思い当たったのは、SNS、Twitterで生じる「炎上」や「バッシング」だ。
それに巻き込まれた人や、叩かれた人にとって、
それらは、文字によってもたらされる「禍」といってもいいだろう。


「文字」に、どう向き合うのか。
「文字」を、どう使うのか。

「新型コロナウイルス」に、どう向き合うのか。
「新型コロナウイルス」を、どう扱うのか。

かけ離れているようで、実は、つながっていることかもしれない。


山月記・李陵 他九篇 (岩波文庫)








2020年5月19日火曜日

【歩くはやさで】新しい自分で、新しい今を生きよう

やばい。
最後で、ぐっとこみあげてくるものを感じて、泣きそうになった。
絵本は子どもが読むものなどと、思ってはいけない。



「歩くはやさで」(松本巌・文、堺直子・絵)は、
大人のための絵本だ。
それも、それなりに年数を生きて、人生経験を重ねてきた大人のための1冊だと思う。

コロナ禍で、外出自粛となり、これまでの日常生活が一変した。
これまで気軽に行けた場所に行けなくなり、
気軽にできたことが、できなくなり
様々なものが奪われたような気がしていた。

今、このタイミングで、「歩くはやさで」を読んで、
自分は、とりあえず健康でいるのだから、
たいして奪われたものなどないんじゃないかと思い始めている。

外出自粛になる前の毎日は、時間に追われ、情報に溺れていたかもしれない。
「走るはやさで」、毎日を過ごしていたような気がしてきた。

コロナ禍により、
自分の生活の中で見過ごしていたものに気が付かされたり、
与えられたものもあるんじゃないかと考えている。

「新しい今を生きよう」
この本のメッセージが、今の自分に響いている。

2020年5月18日月曜日

【フィードバック入門】成長してほしい相手に、何を、どう伝える? 管理職、指導者が自分の態度や行動を見直すために役立つ1冊



誰かに「成長してほしい」と思っている人に、役立つ1冊。
組織のなかで、部下や後輩がいる人だけではなく、
パラスポーツで、選手を指導しているコーチ、
チームのマネジメントをしているヘッドコーチにも参考になると思います。

その人の気づきを促す「コーチング」と、
課題に対応する具体的な技能などを教える「ティーチング」
「フィードバック」は、その両方に関係します。

具体的にいうと、「フィードバック」は、
「成長してほしい」と期待する相手に、
耳の痛いことを伝えることと
うまくいくように立て直しを支援すること

本書では、
「フィードバック」のプロセスを整理し、
一つ一つのプロセスで、
成長を支援する人(マネジャー、コーチ、上司など)が
どのような態度で、何をすべきかを示しています。

「成長してほしい」という思いがあることは大事だけど、
その思いが、相手に伝わるとは限らない。

どうしたら、相手の成長という結果につながるか。
その「どうしたらいいか?」について考えたり、
相手への関わり方を改めて見直すうえで、
参考になる書籍だと思います。
  


2020年5月11日月曜日

「コロナかもしれない」と告げられたら?



「コロナかもしれない」
友人からLINEでそう告げられたら、どうするか?
そんなことを考える機会があった。

相手と自分は濃厚接触者ではなく、最近直接会う機会がなかった人という前提だ。

相談者の症状は、風邪に似ている。
発熱があったが、2日ほどして高熱は下がった。
当初は、回復傾向にあるかと思っていたが、悪寒や体のだるい症状が続いている。

症状が続いていることが気になって、住まいのある地域の保健所、相談センターに電話したうえで、医療機関を受診した。
医師の診断は、PCR検査の対象にはならないとのことで、薬を処方されて帰ってきた。

しかし、症状は続いている。
軽い症状の人でも急変する例があることをテレビで知り、
心配になって、再び、相談センターに連絡して、医療機関を受診した。
しかし、やはり、PCR検査の対象にはならなかった。

相談者は、相談して、受診して、自分にできることは、すでに実行した。
その結果が、自宅療養を継続するということだ。

PCR検査の対象にならないということは、
新型コロナウイルスに感染している可能性が低いか、
感染していても比較的軽い症状ですんでいるのかもしれない。

しかし、症状が継続しているということ
新型コロナウイルスに感染しているか否かが分からないこと
この2つが重なって、不安が増しているのだろう。

どうしようもなく、LINEで発した言葉が「コロナかもしれない」だ。

そんな言葉を受け取った時、私に、一体、何ができるだろう?

もし、自分が同じ状態に置かれたら?と想像すると、不安が湧き上がってくる。

「大丈夫だよ」とは、安易に言えない。
軽い症状でも急変する例があると言われている。

「症状に変化があったら、また、すぐに医療機関に行ってね」だろうか?
すでに2度も、相談・受診している相談者は、自分の症状を注意して捉えているはずだ。
そんなことを言われなくても十分、分かっているに違いない。

私が相談者に言えるのは
「それは、不安になるよね」

もしも、私だったら?と想像して考えられることくらいだと思う。

私がどんな言葉を返しても、相談者が自宅療養を続けている状態は変わらないだろう。

ただ、同じ状態を続けるにしても、
「コロナかもしれない」と考えている人が
少しほっとしたり、不安が少しでも軽くなればと思う。

そういう言葉を、探している。

2020年5月6日水曜日

【三体】SFって、ちょっと苦手だと思っていたけれど。外出自粛のお家時間を楽しめる1冊



「面白い!」と話題になっていた小説「三体」
読もうか、どうしようか迷っていた1冊でした。

宇宙といわれても、あまりピンと来なくて、ロマンを感じないし。
生物は好きだったけど、物理は好きでなかったし。
SFは、あまり積極的に手を出さないジャンルだからです。

しかし、緊急事態宣言で外出自粛となり、お家時間が増えました。
ソーシャルディスタンスとか、三密とか、基本的なことですが
感染対策に気を遣う毎日に無意識のうちにストレスが溜まっている気もします。

いつもなら、「まーいいか」と流せるような他人の一言に 毒を感じとってしまったり、
妙に気になってしまったりもする。

これは、まずい。

生活や趣味に何か少し変化を持たせよう。

必要なのは、頭の中を休ませる娯楽の時間。
エンタメだなーと思いました。

そんなきっかけで手に取ったのが、小説「三体」です。

中国の歴史
科学の理論的の発見の歴史
最新の科学技術
宗教や思想のエッセンス
これらが物語に丁寧に盛り込まれている点がすごい

実際の環境破壊の問題や政治的事件 弾圧や貧困の社会問題もベースに敷かれていて、 改めて考えさせられる面もある

「面白い!」と評判となり、話題になっている理由が分かりました。

世界規模で、新型コロナウイルス感染の問題を抱えている今こそ、
宇宙から地球を見る、環境や生命の生存を考える必要があるのかもしれません。

長編ですが、読み進めていくうちに、ずるずると引きこまれる。 お勧めの1冊です。

三体