2021年4月26日月曜日

【文芸ピープル】英語圏で日本人作家の作品が相次いで出版、「コンビニ人間」は「Human」ではなく「Woman」で

 

「文芸ピープル」(著者・辛島ディヴィッド)は、最近、日本の作家、特に女性作家の作品が英語圏で相次いで翻訳され、出版されている状況について、

アメリカやイギリスの翻訳者や編集者に話を聞いて、まとめたものだ。

「村上春樹は、海外でも人気」ということは知っていたが、それ以外の作家の作品の動向はあまり気にしていなかったので、興味が沸いた。

若手の翻訳家が出てきたこと、

新しい作品、作風が求められており、韓国や日本の女性作家の作品も注目されていること

大手の出版社ではなく、独立系の出版社から出されていること

などなど、イギリス、アメリカの出版業界の状況を断片的に知ることができて、面白かった。

当然だが、原作をそのまま、日本語⇒英語にすれば済むというものではない。

登場人物の名前が、英語では読みにくい・覚えにくい場合、別の名前に変えたり、

「姑」を、どう表記するか、検討したりしている。

作品のタイトルをどう訳すか、表紙をどうするかは、

書店で手に取ってもらえるか、目をとめてもらえるかに関わることで、当然、重視されている。

村上沙耶香さんの作品「コンビニ人間」

英語翻訳版のタイトルは、「Convenience Store Woman」

本書によると、出版社は、あえて「Human」ではなく、「Woman」を採用したという。

表紙の雰囲気も、日本の書籍とはかなり違う点が面白い。


 小山田浩子の「穴」、タイトルはそのまま「Hole」だけど、表紙の雰囲気はやはり異なる。

 

 新型コロナウイルス感染症が終息して、海外に旅行できるようになったら、
 英語圏の書店の棚を覗いてみたい。

2021年4月15日木曜日

【<責任>の生成 中動態と当事者研究】「自己責任」って言われるけれど、そこに「自己」はあるのか? 結果の原因は、どこにあるのか?を考えさせられる1冊

 

 
 「責任」という言葉は、重い。 

 自分の発した言葉、自分がとった行動が、 特に誰かを傷つけたり、何かを損なったりする結果につながった時、「あなたの責任だ」と言われる。

「責任をとってください」と言われる。 謝罪の言葉を述べたり、金銭を渡すことが発生するかもしれない。 

 でも、そもそも「責任」って何なのか? 

 なぜ、自分の発した言葉、自分のとった行動に「責任」が求められるのか? 

 この本は、「責任」の基盤となっている「意思」について解説する。 

 「自己責任」と言われる時、なぜ、「責任」と「自己」が結びつけられるのかを示してくれる。 

 「自己責任」を言われていることも、よくよく考えてみると、 そこに「責任」はないのかもしれない。 

 結果について、その原因を「自己」に結びつけることが適切でないこともありそうだ。 

 哲学の話だが、著者の対談でまとめられているため、比較的読みやすい。

 能動態、受動態、中動態の話、当事者研究に関心がある人には特にお勧めの1冊。



 

2021年4月12日月曜日

【なぜ人と人は支え合うのか】他人を支えるのは、自分を支えること

 

 コロナ禍2度目の春。新年度がスタートした。
 小中学生、高校生など、進級、進学した若い人たちに特にお勧めしたい本を考えた。

 まず、思い浮かんだのがこの1冊。「なぜ人と人は支え合うのかー「障害」から考える」(渡辺一史著)だ。 

 障害のある人、生活をするうえで誰かの助けを必要とする人について書かれているが、障害のない人(健常者と呼ばれる人)だって、一生、誰の手も借りずに生きていける人などいない。 

 病気になったり、高齢により介護が必要になることもある。
健康な人でも時と場合によって、多かれ少なかれ、誰かの助けを借りることはある。
そういう前提を、改めて、思いださせる。 

 さらに、重度の障害があり、日常生活をおくるうえで誰かの手を借りる必要がある人について、彼らは「支える側」にいるだけでなく、実は「支える側」にもなりうることを示してくれる。 
 「障害」を通して、人と人の関係性について考えさせられる。
 自分自身の存在価値についても考えるきっかけになるだろう。