2020年10月30日金曜日

【家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった】笑って、泣いて、元気になれる一冊

 
 笑って、涙して、元気になれる一冊。 

 家族のことを書いているエッセイ本は、世の中にたくさんあるけれど、 この本に書かれているような家族は、そう多くはいないように思う。 

 家族3人、  
著者の視点から捉えられた車いすユーザーの母、ダウン症の弟は、かなり素敵だ。 

そういうふうに捉えられること、そのことが、素敵なのだ。 

読みながら、声をあげて笑い、
涙とともに鼻水が流れてもいいように、
自分の部屋で、一人で読むのをお勧めする。


  

2020年10月22日木曜日

【須賀敦子の旅路】あの頃、よく分からなかった理由

 

 

あの頃は、よく分からなかった。
その理由が、今は、分かる。

10代や20代では、分からない。
社会に出て、他人との間で揉まれて、自分にできる役割や仕事について考えたり、葛藤したり、挫折したりする経験をしたうえで、初めて味わえるものがあるのだと思う。

 作家・須賀敦子の作品「ミラノ 霧の風景」を初めて読んだのは、 大学生の頃だった。
正直なところ、どんな作品だったのか、 どんなことを感じたのか、よく覚えていない。 

当時の私では、須賀が「ミラノ 霧の風景」に書いたものを受けとめたり、くみ取ったりするのは難しかったに違いない。

そのことが、大竹昭子さんの著書「須賀敦子の旅路」を読んで、はっきりと分かった。

 「須賀敦子の旅路」は、著者が須賀敦子の作品の舞台となったイタリア・ミラノ、ヴェネツィア、ローマなどを訪れ、歴史や風景に触れ、須賀に縁のあった人からの話を交えながら、作品を読み解いていく一冊だ。

イタリアから日本に帰国してから作家となるまでの「空白の20年」について、 大竹さんが探っている『東京』の章は、特に興味深い。 

須賀敦子が、なぜ、作家になったのか。 
何が、誰が、きっかけとなったのか。 
執筆の題材を、どのように描こうと考えていたか。 
作家としての姿勢、在り方。 
これらに関する大竹さんの説明を読んで、 
改めて、須賀敦子の作品を読み直して確認してみたくなった。


 

2020年10月1日木曜日

【暗やみの中で一人枕をぬらす夜は】秋の夜長に読みたい一冊

 

大人はみんな自分のものさしを持っているけれど
だれでもそれを唯一と思っている

だから重さを巻尺ではかったり
長さを分度器ではかったりしてしまう

だから大人の話はいつもチンプンカンプン
わかりあったつもりで何もわかっていない

子供はみんなそれをしっているけれど
おりこうなのでなんにもいわない

ブッシュ孝子の詩「ものさし」


 秋の夜長にお勧めしたい1冊、

ブッシュ孝子さんの詩集「暗やみの中で一人枕をぬらす夜は」

この本に収録されている「ものさし」を読んで、思い出したことがある。


子どもに対して、「自立してほしい」「巣立ってほしい」と思いながら、
一方で、「いつまでも傍にいてほしい」「頼ってほしい」と思う。

母と話をしている中で、そんな話があった。

自立してほしいのか?、依存してほしいのか?

一体、どっちなの?

20代の私は、疑問に思ったことを、「それって、矛盾しているんじゃない?」と
指摘した。

「親の気持ちは、矛盾するものなのよ」
というのが、母の答えだった。

私は、その時まで、矛盾している物事があると、
それを整理して矛盾がないようにするのが良いことだと思っていたのだが、
時と場合によっては、矛盾しているままで良いケースがあるのだと気が付いた。

ブッシュ孝子の詩は、
生きることについて、考えさせられる。

失うという事を
知らない人がいる
得るという事を
知らない人がいる
何だか最近は
そんな可哀そうな人ばかり