2020年8月15日土曜日

【おやときどきこども】親の呪い、私の自立

 
 親子関係について書かれている本だけど、 子育てをした経験のない人にも、お勧めの1冊。   

子ども時代に、親との関係に悩んだ人にも届けたい1冊です。 

 「おやときどきこども」の著者、鳥羽和久さんは、大学院在学中に学習塾を開業。  
小中高生の学習指導をされてきたそうです。 

塾に来る子どもとのやりとり、そして、親とのやりとり。親子交えた面談でのやりとり。 それらを通して、様々な角度から、子どもと親の関係性について書いています。 

 私が特に惹きつけられたのは、親の「呪い」について書かれている箇所です。 

例えば、「絵を描く仕事に就きたい」という子どもに対して、 「そんなに現実は甘くないわよ」などと言う親。 親は、自分が持っている「現実」を子どもに突き付け、それを子どもが共有することを望む。 親が示す「現実」の枠組みに従って、進路を決める子どもは多いそうです。 

 鳥羽さんは、こうした親の「呪い」について、 子どもが主体性を獲得するためには、多かれ少なかれ必要なものと位置付けます。 

親の価値観や美意識のもとで、子どもは成長するので、 それらは「呪い」であるとともに、「宝(祝福)」にもなるといいます。 

 肝心なのは、 親が、自分の「現実」にとらわれすぎないこと。 

 時代によって「現実」は変化しますし、子どもがとらえた「現実」を尊重する姿勢が必要なようです。 

 もう一つ、とても惹きつけられたのは次の記載です。 

  大人になったはずの私たちは、まだ、十分に「大人」になりきれていないのかもしれません。 とっくに大人になったはずなのに、まだ自分の弱さに対して自分で手当てすることができないままなのではないでしょうか。 一方で、かつて子どもだったときの私たちは、想像するほどには「子ども」ではなく、大人になったいまと同じようにさまざまなことを考えたり感じたりしていたのかもしれません。 

この箇所を読んで、 子どもの時のほうが、大人になった今よりも、ずっと大人びた考えを持っていたことに気がつきました。 

 著者の鳥羽さんは、 子どもの頃に感じていたことを、もう一度、感じなおしてみることを薦めています。 

 そうすることで、自分を手当てする。自分を受容する。 子どもの頃の自分と、今の自分が手を結ぶことができると言います。 

 どんな人も、誰かに育てられて、大人になる。  
最も身近な親の影響を少なからず受けている。 
そう考えると、親子関係について書かれたこの本を読むことは、
 大人が、自分自身について見つめなおす機会になるかもしれません。


 

2020年8月3日月曜日

【わかりやすい民藝】この1冊を読んでから、民藝に関する他の本を読もう




「民藝」って、何?

柳宗悦、河井寛次郎とかが提唱した運動でしょ。

え、誰それ?

そんな人にも、お勧めの1冊。

なんとなく知っているという人は、さらに深く、理解できると思う。

この本を読んでから、柳の著書を読んだら、もっと深く理解できそうな気がする。



著者の高木さん、時々、ピリッと辛口な一言を挟んでいて、

民藝の解説書というよりも、エッセイのようにも読めて面白い。


後半の対談には、

この本を読んで、「💛マーク」が出ちゃったというナガオカケンメイさんも登場。


現代の作り手の話も出てきて、実際に手に取ってみたいなとも思う。


私は、陶芸や陶器が好きなので、日本各地の作り手や窯元を訪ねる旅をしたい。

時間をじっくりかけて、ゆっくりと眺めて歩きたい。


2020年8月2日日曜日

【ザリガニの鳴くところ】動物学者の著者が、自然や動植物の生態系の知識を活かして創りあげたミステリー




大自然が好きな人

動物の行動に興味がある人、

どこか遠くに行きたい(気持ちだけでも)人に、特にお勧めの1冊。


「ザリガニの鳴くところ」は

ミステリーですが、自然環境や動植物の生態系の話題が豊富に盛り込まれている物語。


一人の若い男性の死。事故か、殺人か。

容疑者となる「湿地の少女」を主人公として、物語が展開する。

主人公が犯人なのか?。そうではないのか?

その謎解きが軸となっているが、

動物学者である著者が、

湿地の自然、植物や昆虫、鳥や獣の生態に関する様々な話題を盛り込んでいることが

この本の面白さを倍増させている。

生きるとは、どういうことか。

メスがオスを殺すのは、なぜか。

人間と動植物に共通するもの、しないものは何か。

考え始めると、深いテーマが敷かれていると思う。


ザリガニの鳴くところ