2020年3月30日月曜日

【モンテレッジオ 小さな村の旅する本屋の物語】本が場所をつなぎ、時をつなぎ、人をつなぐ




「あぁ、なんて豊かなのだろう」と思った。

『モンテレッジオ 小さな村の旅する本屋の物語』は、著者が古書店の店主から話を聞いたことを発端に始まる。

イタリアの小さな村モンテレッジオ

その村から、本の行商人がイタリアの各地へ向かい、本を売り歩いたという。

なぜ?そうなったのか。

彼らはどんな人たちだったのか。

著者の興味が高まり、関係者や村を訪ねていく。

読み進めるにつれて、読者である私も、村に行ってみたくなる。


村を取り巻く自然、振舞われる食事、村と本の関わりについて語る人。

本の行商人たちが大切にしてきたこと、守ってきたこと、挑戦してきたことを知れば知るほど、

なんて豊かな文化が根付いているんだろうと思う。

最近のニュースでは、

新型コロナウイルス感染で、イタリアで多くの方が亡くなられている。


一日でも早くこの問題が収まることを祈る。

落ち着いたら、イタリアを旅したい。

モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語

2020年3月25日水曜日

ストレスへ対処する方法をいくつか引き出しに入れておこう




新型コロナウイルス感染予防、感染拡大防止のため、外出や人と会うことを控えている方も多いことと思います。

様々な予定が変更となり、当初、立てていた計画は変更せざるを得ない。

これから先の見通しもはっきりしない状態は、仕方がないと思いつつ、ストレスも感じます。


荻上チキさんがラジオで紹介されていた

NPO法人ストップいじめ!ナビの無料コンテンツ「心理的危機対応プラン:PCOP(ピーコップ)」
http://stopijime.jp/pcop.html

巻末資料として掲載されている「コーピングレパートリーをつくろう」が、

自分のストレスへの対処法として使えそうだと思いました。

「コーピング」とは、ストレスが訪れた時の意図的な対処方法で、行動で行うもの(行動コーピング)と頭の中で行うもの(認知コーピング)
があり、

例えば、行動では「だらだらする」「目を閉じてみる」などなど。

認知では「あきらめる「忘れる」「問題を整理する」などなど。

どれか一つをすれば有効ということでなく、ほんの少し効くかなと思える様々な方法を、自分の状況にあわせて使えるようにするのがポイントだそうです。



想定外の出来事が起きた時、実行したくてもできないことや、思い通りの方法を選べないことが出てくる。

その時に、「今、できること」を探せることは、一つの能力だと思うし、

小さなことでもできることを見つけたら、それは発見で、自身を成長させるものになりそうです。

目の前にある状態に向き合うことは、自分自身に向き合うことにもつながる気がします。


2020年3月12日木曜日

農福連携って何?に答えてくれる1冊




「農福連携が農業と地域をおもしろくする」は、タイトルそのままの本だ。


農業と福祉が連携することで、農業がおもしろくなり、地域がおもしろくなる。

追加するならば、働く人にとって、仕事がおもしろくなるのだと思う。


「農福連携」とは、農業と福祉の連携。

連携の仕方は、いくつかある。

社会福祉法人などが運営する施設を利用している障害者が、施設外で農業に就労する例(施設外就労・就農)

社会福祉法人などが自ら農業をする例

農家などが障害者を雇用する例

企業が特例子会社をつくって農業分野で障害者の仕事をつくる例

などだ。

福祉の分野では、障害者の働く場をつくるという課題があり、

農業の分野では、農家の担い手の高齢化が進み、担い手不足が課題になっている。

農福連携は、両者の課題解決にもつながるといわれている。


本書は、「農福連携って、何?」「どんな取り組みがあるの?」という疑問に答えてくれる一冊だと思う。

単なる解説書ではない。

具体的な取り組み事例が紹介されており、その中に登場する「人」が興味深い。

ほとんど未経験に近い人が、「なぜ?」農福連携に取り組むことになったのか?

支援する人が、どんなことに気づいたのか(気づかされたのか)

働き始めた利用者(障害者)にどんな変化が起こったのか。

季刊誌「コトノネ」の読者にとっては、過去に掲載された施設・法人の例を、再度、読みかえすかたちになるのだが、

私は、改めて読んでみて、やっぱり、いいなぁと思った。

自分も一緒になって作業したら、楽しそうだな。

と羨ましくなった。

農業、福祉、地域振興に取り組んでいる方には、もちろんお勧めだが、

今の自分の働き方について悩んだり、煮詰まっている人にも勧めたい。




【星の子】うちの家族は普通じゃない。その普通って何だろう?



今村夏子さん作品に出てくる人物は、ちょっと変わっている。

学校のクラスメイトの中で、「あいつ、ちょっと変わっているよね」と言われてしまうような人。

周囲の友達とうまくやっていこうと努力しているけれど、ちょっとずれてしまう人。

ずれていることを自覚している人もいれば、ずれていないと思い込んでいる人もいる。

今村さんの作品を読むたび、

「普通」の人など、実は、いない。

誰でも、みんな、ずれている。

と思わされる。

ずれている部分は、人によっては「個性」というのかもしれないし、

「障害」なのかもしれないし、度が過ぎると、ストーカーのようになるのかもしれない。

ただ、その人が「普通」と思えば、「普通」になるし、

「おかしい」と思えば、「おかしい」のだろう。

小説「星の子」は、主人公の少女の視点から家族を描いている。

両親は、怪しげな宗教にはまっている。

姉は、ある時から、家出したまま帰っていない。

叔父の家族は、少女のことを心配している。

成長するにつれて、これまで、家族の中で常識だったことが、友達の家族の様子を聞くと、どうやら常識が「違う」らしいと気づくこと、

誰にでも、そうした経験があるだろう。


「星の子」の主人公の少女に、少しずつ変化の兆しが感じられる。

彼女は、家族をどう受けとめていくのか。

両親や不在の姉との関係性がどうなっていくのか。

さまざまな想像を駆り立てられたまま、物語が終わる。

「壊れている」と思えるような家族にも、「壊れていない」部分がある。

家族の関係性を考えさせられる一冊。