2022年10月16日日曜日

【あなたを閉じ込める「ずるい言葉」】モヤモヤしても言い返すことができなかった。あの時の私に贈りたい一冊

 

 子どもの頃、大人から言われた一言に、納得できないものの、言い返すことができなくて、もやもやした経験はないだろうか? 

 大人の話を聞いていて矛盾する点があり、「オカシイ」と指摘したら、「子どものくせに、偉そうなことを言うな」と言われたり、 こちらが頼んでもいないことをされて、不満を述べたら、「あなたのことを思って、こうしているんだよ」などと言われたり、 「自分の意見ははっきり言いなさい」と言われたから、はっきり言うと、怒られたり。 

 誰にでも、大なり小なり、そんな経験があるものだと思う。 

 成長するにつれて、子どもは大人には大人の事情があることを知る。
私自身、人間関係を上手くやっていくには、自分の心の中にもやもやしたものがあっても、 それを見て見ぬふりしたほうが良いと考えるようになった。 
 「世の中、そんなもんだ」と、どこか諦めてやり過ごすことが大人になることなんだと思うようになった。

 森山至貴さんの著書「10代から知っておきたい あなたを閉じ込める「ずるい言葉」」を読んで、 自分が 子どもの頃、大人から言われてモヤモヤした言葉、 仕事関係の人から言われてモヤモヤした言葉に類似する言葉を思い出し、 モヤモヤした理由が明確になった。 

 そして、そのモヤモヤを感じたことは当然であり、 正々堂々とモヤモヤして良いのだと思えてきた。 心の深いところにあった傷が癒されたようにも思う。

一方で、自分自身も「ずるい言葉」を使っていることに気が付かされた。 
 自分と相手との関係性、相手の状況、相手を取り巻く環境を踏まえて、 言葉を選ぶことがいかに大切か。 その点を改めて考えさせられる1冊。

2022年10月4日火曜日

障害は軽いほうがキツイ?

 

 「知的障害は軽い人ほうがキツイかもしれない」
 障害者に接する機会が多い友人と、 知的障害のある人について話していた時、 こんな指摘があった。 「キツイ」というのは「生きづらい」という意味だ。 

 障害の程度が軽い場合、重い人と比べると、「できる」ことが多い。
 障害のない人と一緒に働いたり、自分の意思で稼いだお金を娯楽に使ったりすることができる。
 一方で、障害のない人と障害のある自分とを比べて、その違いを自覚する。障害のない人からの偏見や差別にも気が付く。そして、劣等感を抱えている人もいる。 自分自身の障害や、障害のために生じる「差」が分かることで傷つく。 それゆえに「生きにくさ」=「キツさ」があるように思うということだった。

 「初恋、ざらり」は、軽度な知的障害のある女性・上戸有紗と、障害のない男性・岡村の恋愛を軸に、職場の人や家族との人間関係を描いている漫画だ。

 二人の恋愛が進展していく過程で、
好きな相手に、障害を隠し続けるのか。カミングアウトするのか。
 付き合い始めた後、相手に障害があることを知った時、どう受けとめるのか。
 日常生活や仕事で、障害ゆえに起きる「失敗」の出来事に、どう対応するのか。
 親に紹介する時、相手の障害についてどう説明するのか・しないのか。 
などなどの課題が描かれている。 

有紗と岡村それぞれの心情が細やかに表現されている作品だと思う。 

 この漫画を読んで、改めて
「障害が軽い人のほうがキツイかもしれない」という友人の指摘を考えた。 

障害の種類や程度と、「キツさ」を単純に結び付けるのは不適切かもしれない。 
ただ、その「キツさ」がどういうものか。 どういう場面で、どんな出来事に直面し、戸惑ったり、悩んだりするのか。 また、それを乗り越えるには、どうしたらいいのか。 この漫画は一つの例を示してくれている。