2019年11月28日木曜日

本当に悪いのは、誰か? 



チャンネルを変えても似たり寄ったりの内容を流していると知りながら、
テレビのワイドショーを見るのが習慣になっている方、いませんか?
その習慣、ちょっと危険な気がしてくるかもしれません。

小さい書房さんの絵本「二番目の悪者」
この絵本のお話は、心が温まるような物語ではありません。

「悪者」とは、一体、誰のことなのか?
もしかしたら、自分自身も「悪者」なのではないか?
と考えさせされます。

本書の終盤に、空の雲が、こうつぶやきます。

「誰かにとって都合のよい嘘が、世界をかえてしまうことさえある。
だからこそ、なんどでもたしかめよう」

冒頭にあげたテレビのワイドショーは、世間話の種を提供してくださる番組。
社会の中にある問題を、分かりやすく解説してくれるものもあるように思います。

ワイドショーは、嘘を垂れ流しているわけではないとも思うけれど、
テレビ番組によって与えられた情報について、本当かどうかを確かめようとする人は少ないでしょう。
なので、この絵本を読むと、 ちょっと危険に感じるかもしれません。

本書の帯に書かれている「考えない、行動しないという罪」
というキャッチコピー、ピリッと効いています。

でも、悪者にならないように、「考える」「行動する」ができるのか?
と自分自身に問いかけると、大人になればなるほど基本的には賛同しながらも、
「場合によって」という言い訳がでてきてしまう気がします。

そうした人間の意思の弱さが、絵本の中に登場する動物たちの姿に重ねて描かれている気がして、この絵本で指摘されていることは「他人事ではない」と感じます。

この絵本は、親子や家族で一緒に読んで、どんな意見や感想を持つのか、互いに語りあってみてほしい一冊です。クリスマスやお正月のプレゼントにお勧めしたいです
  



二番目の悪者




2019年11月27日水曜日

社会をたのしくする障害者メディア「コトノネ」リニューアル



季刊誌「コトノネ」最新号の32号は、これまでの誌面をリニューアル。
巻頭スぺシャルインタビューは、「障害者が、国政をひらく」をテーマに、れいわ新選組の山本太郎さん、木村英子さん、船後靖彦さんのインタビューだ。

ジャーナリストではないコトノネ編集部が、取材にあたって考えたこと、取材中に心の中にあったものも綴りながら、相手に質問をぶつけて得たやりとりがまとめられている。

一般の新聞記事のように読みやすくはないと思う。
でも、他の紙媒体には出てこないような、インタビューの場の空気感、取材者の緊張感、互いのやりとりの機微が、紙面から伝わってくる気がする。

自分がその場にいたら、どんな気持ちでいるだろう。
どんなことを聞いてみたいだろう。
いや、相手が話したいことを、ただ聞きたいかもしれない。
そんなことを考えながら、読んだ。

巻頭インタビューのほか、
私が特に興味深く読んだのは、コトノネ観光課の企画「二人で、一人暮らし」
重度障害のある人が、親元を離れて、また、施設でもなく、地域で暮らす在り方を紹介したものだ。

私は、知的障害のある方とシェアハウスで一緒に生活した経験があるが、
重度障害のある方との生活は、想像がついていなかった。

重度訪問介護という制度を使って、介護者と二人で、一人暮らしをしている様子を読んで、「軽度なら、できる」「重度だから、できない」と思い込みが自分の中にあるなぁと思った。

「やってみたい」があるなら、「できる」ようにするために、どうすればいいかを考える。

どうすればいいかの選択肢となるのが、「制度」。
最初から「できない」と決めつけて、既存の制度を使えないものにするのは、
やっぱり、おかしいな。と考えたりした。

紹介はしきれないですが、読みどころはたくさんあります。
定期購読をお勧めします。
コトノネ vol.32




2019年11月6日水曜日

大人の気づき #ヨシタケシンスケ



 



「あれもできないな、これもできないな」と考えちゃうことが、ありますね。
それほどネガティブに考えているわけではないけれど、自分の能力とか、現状とかを考えているうちに「できない」と思うことがある。

ヨシタケシンスケさんのエッセイ「思わず考えちゃう」の中で、
「できないこと」がテーマの一つに取り上げられていた。

「あれもできないな、これもできないなって思っているということは、それだけ何か別のことができるようになったから」

「自分ができないことが見えるように、わかるようになってきたんだなっていう。大人の気づきですね」

ヨシタケさんは、こう書かれていました。

本書の中では、「できないこと」についても取り上げており、
「自分にやりたいことがあって、それができないのは、大した悩みじゃない。けれど、
自分の傍にいる人に、できてほしいことができない時に、どう一緒にやっていくかが、実は一番難しい」と書かれていました。

子育てを経験されているお父さん、お母さん認知症の方を介護しているご家族は、
傍にいる人ができないことを許せなかったりする。
でも、そんな相手と寄り添う必要があり、相手への向き合い方が難しいという指摘だと思います。

「できること」「できないこと」に関する2つの指摘に、思わず、考えさせられた。

本書には、くすっと笑えて、肩の力が抜ける話題がたくさん詰まっている。
ただし、笑って終わりではなく、生き方とか、価値観とか、人との向き合い方とか、「思わず、考えさせられちゃう」ような哲学的なテーマも多い。
  
思わず考えちゃう




2019年11月5日火曜日

人との距離感



写真には、撮る人と、獲られる人の距離感が表れる気がする。

相手に、ぐっと近く寄るのか。
それとも、少し引いて、距離をとるのか。

どんな作品にしたいか、どんな写真を撮りたいかによって、
距離は変わるものだと思うけれど、
頭の中で計算する前に、自分が、相手と、どの程度の距離をとるのがいいか。
無意識に定めている気もする。

お友達のつながりで、野口健吾さんの写真展「庵の人々 The Ten Foot Square Hut 2010-2019」(銀座ニコンサロン10月30日~11月12日、大阪ニコンサロン11月21日~12月4日)を観にいってきた。

ブルーシートやベニヤ板などで作った「庵」の人々。
被写体には動きがなく、記念写真にでもおさまる感じだ。

撮る人と、撮られる人との間には、物理的な距離がある写真だが、
撮る人と、撮られる人の間の距離が、近く感じる。

撮る人と、撮られる人の間に、なんらかの対話があり、
一定の関係をつくることができなければ、決して撮られなかった写真だと思う。


野口健吾さんWEBサイト
http://www.kengonoguchi.com/