2021年5月18日火曜日

【マイノリティデザイン】「弱さ」を起点に、社会を良くする

 
 「見えない。そんだけ。」
 2014年に開催されたIBSAブラインドサッカー世界選手権 ポスターに掲げられたこのキャッチコピーは、印象に残っていた。 

 この広告を手掛けたのが、『マイノリティデザイン 「弱さ」を活かせる社会をつくろう』の著者・澤田智洋さんだったということを、本書を読んで初めて知った。 

 澤田さんは、広告会社に勤務し、コピーライターとして活躍されていたが、 長男が生後三カ月の時に視覚障害があることが分かったそうだ。 

 そのことをきっかけに、さまざまな「障害」のある人に会い、話を聞き始める。
 日常生活をどのように過ごしているのか。 
仕事はどうしているのか。 
障害があるがゆえの、ちょっとした失敗などなど。

 様々な障害者の話を聞く中で、著者は、「できない」「苦手」というものを「克服するもの」ではなく、「生かすもの」と捉えると、新たな価値を創造することにつながることに気がつく。 

 この気づきが、著者の広告関連の仕事の内容や着眼点に反映される。 
できないこと、苦手なことを起点に、社会を良くすることを考える。 
「マイノリティデザイン」のコンセプトが浮かびあがってくる。

 本書では、著者自身の経験や実感、広告の実例を交えて、「マイノリティデザイン」の例が紹介される。

 スポーツに関しては、 もともと運動音痴で苦手な著者が、視覚に障害がある息子と一緒に楽しめるスポーツはないのか。新しいスポーツをつくれないかと考え始め、「ゆるスポーツ」の考案につながる。パラリンピックで実施される競技や種目とは違う点もあるが、着眼点が面白い。

 コロナ禍で生活の仕方が変わったことにより、人それぞれ、これまで気が付かなかった「できない」「難しい」「苦手」な事柄、場面に気づいたのではないか。その気づきを、何か新しい発想や創造につなげることができるのかもしれないと、本書を読みながら考えている。

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