2020年3月12日木曜日

【星の子】うちの家族は普通じゃない。その普通って何だろう?



今村夏子さん作品に出てくる人物は、ちょっと変わっている。

学校のクラスメイトの中で、「あいつ、ちょっと変わっているよね」と言われてしまうような人。

周囲の友達とうまくやっていこうと努力しているけれど、ちょっとずれてしまう人。

ずれていることを自覚している人もいれば、ずれていないと思い込んでいる人もいる。

今村さんの作品を読むたび、

「普通」の人など、実は、いない。

誰でも、みんな、ずれている。

と思わされる。

ずれている部分は、人によっては「個性」というのかもしれないし、

「障害」なのかもしれないし、度が過ぎると、ストーカーのようになるのかもしれない。

ただ、その人が「普通」と思えば、「普通」になるし、

「おかしい」と思えば、「おかしい」のだろう。

小説「星の子」は、主人公の少女の視点から家族を描いている。

両親は、怪しげな宗教にはまっている。

姉は、ある時から、家出したまま帰っていない。

叔父の家族は、少女のことを心配している。

成長するにつれて、これまで、家族の中で常識だったことが、友達の家族の様子を聞くと、どうやら常識が「違う」らしいと気づくこと、

誰にでも、そうした経験があるだろう。


「星の子」の主人公の少女に、少しずつ変化の兆しが感じられる。

彼女は、家族をどう受けとめていくのか。

両親や不在の姉との関係性がどうなっていくのか。

さまざまな想像を駆り立てられたまま、物語が終わる。

「壊れている」と思えるような家族にも、「壊れていない」部分がある。

家族の関係性を考えさせられる一冊。


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