2018年7月25日水曜日

苦手な人を受け入れる方法は、ありますか? #介護民俗学という希望





「他人を変えることは、難しい。だから、他人を変えようとするのではなく、自分が変わることが大切」

人間関係の問題に躓いて悩んでいた時、こんなアドバイスをいただいたことがあります。

他人の価値観や考え方を変えることは、他人次第。
相手に「価値観や行動、態度を変えてほしい」と思っても、なかなか上手くはいきません、

これに対して、相手に関する自分の受けとめ方は、自分で変えられます。
相手は、以前と変わりなくても、自分の受けとめ方を変えることでストレスは軽減します。

六車由美さんの『介護民俗学という希望』は、介護の現場で、高齢者から人生の物語などを「聞き書き」することを通じて、みえてきたものをまとめています。

「聞き書き」とは、対象者(介護の現場では、施設を利用している高齢者)から、若いころの経験や家族とのことを聞いて書き出し、表現していく手法ですが、この「聞き書き」が介護の現場に効果をもたらしているといいます。

なぜなら、介護は、スタッフ(介護する側)と高齢者(介護される側)という「する・される」の関係が固定されてしまいますが、「聞き書き」では、スタッフ(聞き手・教えてもらう側)と高齢者(話し手・教える側)の「するされる」の関係が逆転します。人間関係の再構築が生じます。関係が一方的だと、閉塞感がありますが、関係の再構築により人間関係を豊かにひらくことができるのだと思います。


また、
著者は、表現することと、介護することについて、次のように書いています。

表現することが、すなわち、表現の対象者と誠実に向き合い、対話することであるならば、
介護の現場で、ケアの専門家として利用者さんと向き合い、共に生きようとする介護の在り方と決して矛盾するのではなく、むしろ重なりあうものであると言えるのではないか。
ケアすることと、表現すること、それは人と人との向き合い方の本質的なところでつながっているのである。

私は、冒頭に挙げた「苦手な人を受け入れる方法」のヒントが、ここにあるように思うのです。

「苦手な人」とは、相手の中にある苦手な部分に気が付き、注目してしまうがゆえに「苦手」になってしまいます。そこで、若いころの恋愛、仕事で体験したことなどを聞くなど、人と人として相手に向き合う場面があると、それまで知らなかった一面を教えていただくことになり、「苦手な部分」とは別の部分を新たに知ることになり、相手を受け入れることにつながるように思います。


介護民俗学という希望: 「すまいるほーむ」の物語 (新潮文庫)

#介護民俗学#聞き書き

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