「理不尽なことも、ありますよ」
福祉関係の仕事をしている友人が、
何かの折に、ぽろりとこぼした。
具体的なことは、何も言わなかった。
仕事のなかで向き合っている相手やご家族の
プライベートなことに関わることだったのかもしれない。
職業上、それを他人に明かさないという守秘義務がある。
しかし、話の隙間にこぼれた「理不尽なことも、ある」という
一言が、私の中で、とても印象に残った。
「困っている人には、手を差し伸べるべきだ」
「自立のためには、甘やかしてはいけない」
「時間は、守るべきだ」
「人を傷つけることは、いけないことだ」
人はそれぞれ、自分の中で、「こうしたほうがいい」「こうするべきだ」という価値観、
信念を持っている。
しかし、社会の一員として生きているなかで、
自分の価値観と、異なる価値観を持ってる人と出会うことがある。
「違う人も、いるよね」とか
「世の中には、いろいろな人がいるなぁ」と考えて、
自分と他人との違いを流せればいいのだが、
頭の中でそう思っていても、気持ちがモヤモヤしたり、イライラすることがある。
「理不尽なことも、ある」という一言は、
モヤモヤやイライラの感情を、
いったんスパッと切り捨てる言葉だと思った。
価値観や信念が傷つけられ、
それらが揺らぐような出来事があった時、
「理不尽なことも、ある」と言うことで、
しなやかに乗り切っていくことができるかもしれない。
「諦め」とは、違う。
しなやかに、強く生きるための技術だろう。
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