「肉体の鎮魂歌」(増田俊也・編)は、沢木耕太郎の「三人の三塁手」、山際淳司の「江夏の21球」などなど、スポーツノンフィクションが好きな方なら、「あぁ、あの名作ね」と思われる作品が収録された本。
作者が異なるスポーツノンフィクションを1冊で読めるのは、美味しいモノが少しずつあれこれ入っている豪華な幕の内弁当のようです。
「三人の三塁手」は、プロ野球・読売ジャイアンツの長嶋茂雄と、長嶋がいたことによって運命が変わった三塁手2人に注目した作品。
そして、「江夏の21球」は、日本一をかける試合で投げた広島カープの江夏豊に注目した作品です。
広島が1点リードで迎えた9回裏の場面
マウンドにいる投手・江夏が、何を感じていたのか。
日本一につながる21球に、ぎゅっと焦点を絞って書かれています。
最初に手にとったのは、私がまだ学生の頃で、さらっと読んでしまったのだけど、
それから何度か読み返すたびに、読んでいる自分の年齢が高くなっているせいか、
しみじみと味わい深く感じるようになりました。
「昭和」の雰囲気というか、
「スポーツといえば、野球」であり、
テレビでもナイター中継していた時代が少し懐かしくなります。
この本で初めて読んだのは、高山文彦の「遥かなる祝祭。―吉村禎章の奇跡。―」
この作品、良かったです。
試合中にチームメイトとの衝突により大怪我を負った読売ジャイアンツの吉村選手が復活し、代打で活躍し、やがて引退を迎える話を書いています。
吉村選手が自身の怪我をどう捉えて、復活へ向けて歩んできたか。
再起し、代打で活躍し、やがて迎える引退に、周囲の人々はどんな対応をしたのか。
一方で、将来有望と期待されていた吉村選手に大怪我を負わせてしまった選手が、どんな思いで、吉村の復活や引退を観ていたか。これは、この作品の核になっています。
光と影とか、
栄光と挫折とか、
そんな一言、二言では片付けられないから、
著者それぞれ、自分が焦点を当てた一つひとつ丁寧に書いている。
選手や競技に対する著者の熱気が、行間から滲み出てくるような気がします。
スポーツノンフィクションをまだ読んだことがない人にも、お勧めです。
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