渋谷や吉祥寺などの繁華街、ビルの一角に「占い」の看板を掲げている店舗を見かけることがある。外から中の様子は分からない。営業しているようなので、それなりにお客さんがいるのだろうけれど、人が出入りしているところを目撃したことはない。気になっているけれど、私自身はまだ実際に入ったことがない。「占い」に対してなんとなく「怪しい」という印象があり、現実から逃避する手段のように考えてしまう。お金を使うなら、美味しい食事や新しい洋服とか、具体的なものに使った方が良いような気がするからだ。
「Z世代」とは、1990年代後半から2010年頃までに生まれた人たち。2023年現在、10代~20代前半の人たちを指す。この世代の特徴として挙げられるのは、スマートフォンやSNSを子どもの頃から使っているということだろう。米国在住の竹田ダニエルさんの著書「世界と私のA to Z」(講談社)は、1997年生まれの著者の視点から見たZ世代の傾向や特徴について紹介している。
この本の中で、興味深かったのは「スピリチュアル」について書かれた箇所だ。スピリチュアルなものとは、タロットリーディングや瞑想、星占いなどが挙げられる。
著者は、次のように書いている。
『テクノロジーが発達した中で育ったZ世代が、「スピリチュアル」という精神的で非科学的に見える文化になぜ関心を持つのか、不思議に思う人も多いかもしれない。しかし、Z世代が子どもの頃から不安定な世界を生き、将来に不安を抱えていることを考えれば、心の拠りどころとして科学や目に見える世界以外のものを信じたくなる傾向にも納得がいくのではないだろうか。繋がりすぎている時代において、星占いで運勢を占ったり、TikTokのタロットリーダーをフォローしたり、水晶の力に頼ったりすることは、既に決まっていて自分の力では変えられないものを知ることであり、安心感を得られるのだ。』
(中略)
『古くからの宗教の慣習を捨て、科学や理屈では説明ができない、不思議で魔法的でどこかわくわくするような「信じられる」ものを、Z世代は求めているのだ』
Z世代にとって、スピリチュアルなものを利用することは、息苦しさや不安を感じている現実から自分自身を解放する手段なのかもしれない。彼らにとって、スピリチュアルなものは現実から目をそらしたり、逃げたりするための手段ではないのだろう。科学的に説明が付かない物事に触れることで自分自身の世界観を拡げ、それによって目の前の現実に向き合い、そこにある厳しさ、息苦しさを乗り越えようとしているのかもしれない。
SNSなどで占いやタロットなどを楽しみながら、自分自身の世界観を拡げているとしたら、Z世代は逞しい感じもする。
0 件のコメント:
コメントを投稿