朝9時半頃、勤務先の最寄駅であるJR御茶ノ水駅で下車する時、
ホームを歩いている人々の中に、誰かの姿を探してしまう。
知り合いではない。
探すというよりも、つい気になって見てしまうというのが正しいかもしれない。
年齢は70~80代、たいてい2人連れだ。
白髪の男性がトートバックを肩から下げて、杖をついて歩いている女性の隣を歩いていたり、背中が丸い男性を乗せた車いすを後ろから押してエレベーターに向かっていたりする。
「私の父母と、同じ世代かな?」
「隣にいるのは娘さんかも」
彼らの姿を見ながら、2人の関係性を想像する。
彼らの目的地が、駅近くにある大学附属病院であることはほぼ間違いない。
「毎日の食事も、あの男性が準備しているのだろうか」
「お風呂やトイレも介助しているのかな」
などなど、通院が必要な家族との生活について、あれこれ考えをめぐらす。
幸い、私の両親は今のところ健康で、これまで病院に付き添った経験はない。
しかし、これから先、いずれ自分も似たような立場、状況になるのかもしれないと思っている。だから、駅のホームで、彼らの姿が気になってつい見てしまうのだと思う。
オカヤイズミさんの漫画「いいとしを」は、バツイチで40代の会社員である息子が、母親の急逝を機に、実家に戻って70代の父親と同居を始める物語だ。
父と息子の間は、特別に仲が良くも悪くもない。
大人になって以降はそれぞれで生活してきたから、互いによく知らない面もある。
改めて、同居するようになってから見る父親の姿は、子どもの時に見ていた父親の姿とは異なる。
子どもが幼い時、「親の背中を見て、子は育つ」と言われる。
しかし、子どもが成人し、親子ともにある程度、歳を重ねると、
子は、親の姿から老いに気づき、先のことをあれこれ心配して、
「親の背中を見て、子は憂う」と言えるのかもしれない。
漫画「いいとしを」は、父親と息子の間で、ぽろぽろとこぼされる「つぶやき」に耳を傾ける作品だ。短い言葉の一つひとつを噛みしめるように読むと、深い味わいがすると思う。
「いいとしを」https://amzn.to/3xelRK6
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