「ドラマ、見ました?」
お会計をしてくれた店員さんが、話かけてきた。
そのお店にはよく、足を運んでいるが、店員さんから話しかけられたのは初めて。マスクで顔が半分隠れていることもあって、最初は、自分に話しかけられたことが分からなかった。
私が購入したのは、「その女、ジルバ」という漫画。全5巻の漫画の大人買い。
NHKのラジオで、作家の高橋源一郎さんが紹介していて、気になっていたのだが、偶然、古本屋さんにセットで出ているのを見つけたのだった。
店員さんは、店頭に出したばかりだった漫画を、私がすぐに購入したので、「ドラマを見た人かな?」と思って話しかけてきたようだ。
質問されたことが分かり、NHKでドラマ化されたことは知っていたが見ていないこと。ラジオ番組で紹介されて、ずっと読みたいと思っていたこと。
古本屋さんで、かなりリーズナブルに全巻セットを購入できてラッキーと思っていることを店員さんに伝えて、そのお店を後にした。
「その女、ジルバ」は、40代に突入した主人公が、高齢のホステスのみがいるお店に飛び込むところから物語が始まる。
お店に飾られている、初代ママのジルバが、どんな人だったか。
ブラジル移民、戦後、彼らにどのようなことが起こったか。
日本に引きあげてきた人、引きあげなかった人。
私が知らない歴史の一端が描かれている。
一方で、主人公の故郷・福島、東日本大震災の後の今を生きる人々も描かれる。主人公は、デパートの売り場から倉庫へ担当が変わり、独身で彼氏もいない。
40歳、これからどう生きていったいいか。不安や悩みを抱えているのだが
ジルバのお店で高齢のホステスやマスターの話を聞くうちに、変わっていく。
ブラジル移民や終戦後の混乱時に起きた出来事など、知らない歴史がたくさんあることも知った。
「生きていく」ということについて、しみじみ考えさせられる漫画。
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