気になる女。
そういう存在の人が、誰にでも、一人か、二人いた経験があるのではないでしょうか。
美人ではなく、着飾っているわけではなく、特別目立つ振る舞いがあるわけでもない。
だけど、何だか気になって、つい注目してしまう。
あの人は、いつも、こんな感じの洋服を着て、こんな顏をしている。
あの時刻には、たいてい、このあたりにいる。
どのお店で、こんなものを購入している。
気になる女の情報を、無意識に集めてストックしていたりする。
主人公が気になるのは「むらさきのスカートの女」だ。
物語が進むにつれて、「むらさきのスカートの女」がどのような女性かが明かされていく。
どんな場面で、どんな行動をとる人なのか、エピソードが積み重ねられる。
彼女を見守っている主人公が、「むらさきのスカートの女」の言動に何を感じているのかも示されていく。
そして、ある事件が起こり、「むらさきのスカートの女」が、姿を消す。
その途端、彼女が何者だったのか、再び、分からなくなる。
主人公と「むらさきのスカートの女」が重なってしまったかのような感覚も覚える。
それまで構築されていたはずの世界が、クライマックスを境に、ぐにゃっと曲げられるような気もする。
気になる人物、気になる女は、誰にでもいるだろう。
著者は、誰にでもある「気になる」心理を巧みに突いているのかもしれない。
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