書籍のメインタイトルが「へろへろ」。
「なんじゃ、この本?」と、たいていの人は思うでしょう。
本書は、宅老所「よりあい」をつくった人たちのことをつづった本です。
著者の鹿子裕文(かのこ・ひろふみ)さんは、仕事を干されて暇を持て余していた編集者でしたが、「よりあい」に巻き込まれていきます。
宅老所を立ち上げる中心人物たちと出会い、
知り合いになって、親しくなるうちに、
その人たちから頼まれたことを引き受けていくようになります。
その過程で、宅老所の関係者から「雑誌をつくってほしい」と依頼されることになるのです。
人が、人に魅かれる。
そういうことなのだと思います。
魅かれるだけで済まずに、行動することになるのは、
その人の魅力の強さかもしれないし、
その人との間で培った「つながり」、関係性の強さなのかもしれません。
高齢の方が安心して過ごせる場をつくりたい。
「老人ホームに入らないで済むための老人ホーム」をつくりたい。
関係者は、その目標に向かっていきます。
私が、とても考えさせられたのは、「お金」に関する話。
「世の中には、もらっていいお金と、もらっちゃいかんお金がある」
「意味のないお金で、どんなに立派な建物を建てたって、そんな建物になんの価値もない」
中心人物のひとり、下村恵美子さんの指摘です。
建物を建てるという目標を達成することだけがゴールなら、
テレビでも新聞でも利用して宣伝すればよかったかもしれない。
どのようなお金であろうとも、建物が建てられたらOKだからです。
でも、それには断固反対する人がいた。
「そこを間違えてはいけない」と主張する人がいたのです。
どのようなお金で宅老所を建てるのかということも、
宅老所の実現にとって重要だったのだと思います。
「もらっちゃいけないお金」は、受け取らない。
喉から手が出そうになるほど、お金が必要な時、その選択をできるだろうか。
自分で自分に問いかけたくなりました。
書籍のタイトルは「へろへろ」だけど、
中身はめちゃくちゃ熱く、骨太な感じがします。