2026年1月9日金曜日

「勝っても、負けても」


元旦はニューイヤー駅伝、2日と3日は箱根駅伝。

お正月、X(旧Twitter)のアプリを開くと、襷をかけて懸命に走る選手の姿を沿道から撮影した写真や動画が次々と流れてきた。

 

あの選手に応援の一言を伝えたい。

沿道には来ていない人と、現場の興奮を分かち合いたい

一つ一つの投稿には、そんな思いが乗っている。

応援している人も一生懸命だ。

熱い声援を送った選手・チームが勝ったら、喜びで胸いっぱい。負けたら、ガックリ肩を落とすことになる。選手やチームへの期待が大きいほど、大事な試合で負けると、応援している人も感情が大きく揺さぶられるものだろう。

 

プロ野球のヤクルトスワローズのファンとして知られている作家の村上春樹さんは、「スワローズ詩集」という作品で、試合を観戦する時の姿勢、勝ち負けの受けとめ方について書いている。

 

「もちろん負けるよりは勝っていた方がずっといい。当たり前の話だ。でも試合の勝ち負けによって、時間の価値や重みが違ってくるわけではない。時間はあくまで同じ時間だ。一分は一分であり、一時間は一時間だ。(中略)時間とうまく折り合いをつけ、できるだけ素敵な記憶をあとに残すこと――それが何より重要になる」

 

そして、さらに、次のように締めくくっている。

 

「そろそろ今夜の試合が始まろうとしている。さあ、チームが勝つことを祈ろうではないか。そしてそれと同時に(密かに)、敗れることに備えようではないか」

 

私は、この最後の一文、「敗れることに備えようではないか」が好きだ。

 

熱心に応援するファンにとって、敗戦は受け入れがたい。敗戦したら生じるであろう気持ちの揺れを自覚しているからこそ、著者は「備えよう」と言っているのではないか。

 

応援している選手やチームが試合に勝っても負けても、観戦の時間を「素敵な時間」にできるか否かは、観る人の受けとめ方に掛かっているかもしれない。

「負けたけど、あのプレーは良かった」「選手同志の声かけのタイミングが適切だった」「試合内容は散々だったが、会場で飲んだビールは美味かった」「帰り道の夜空の星がすごく綺麗だった」などなど。

「素敵な時間」だと思える何かを見つけられるように、見る目を養っていきたい。

 

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2026年1月2日金曜日

【思考のレッスン】読書の効用と「分からない」経験の価値



 

丸谷才一さんの著書「思考のレッスン」に、読書の効用が3つ挙げられていた。

 

まず、第一は、「情報を得られる」ということ。

これまで知らなかったことを教わるのは楽しいし、得をする。

 

第二は、本を読むことによって「考え方を学ぶことができる」ということ。

本を1冊読んでおもしろかったり、感心したりしたら、そのままにしないで、著者のものの考え方は何が特徴か、どのように論理が展開されているかを考えると、とてもためになる。

 

第三は、「書き方を学ぶ」ということ。

本を読んでおもしろいと思ったら、それがどのような書き方をされているから感銘を受けたのか考えることが大事。

 

本書の初版が発行されたのは2002年。24年ほど前に書かれたものだが、読書の3つ効用は、現在でも変わらないものだと思う。

 

しかし、読書を取り巻く環境は変わった。

2007年に初代のiPhone発売され、スマホの普及とともにX(旧Twitter)などのSNSによる個人の情報発信が広がった。

 

今、情報を得るために、私がまず使うのはインターネット検索だ。著者の考え方や論理展開を整理したり、書き方を工夫するうえでも、「ChatGPT」などの生成AIの助けを借りる。これらは、自分の頭を捻って考えるよりも簡潔な要約を示してくれる。

 

「効率」という点からみると、読書よりこれらのツールを活用するほうが有用かもしれない。技術の進展とともにこうしたツールは今後もますます機能向上するだろう。

そのいう時代の中で、「読書ならではの効用」とは何だろうか。

 

私は、本を読むという「経験そのもの」に、他のものでは代替不可能な価値があると考えている。

 

本を読んだ時、著者の考え方や論理の展開がよく分からないことがある。では、「分からない」ことが無駄になるかというと、そうではないだろう。

実生活の中で出会った人の考え方が分からなかったり、矛盾を感じたりした経験は、誰にでもあるのではないか。それらをいったん受けとめるうえで、読書で培った「分からない」という経験が役に立ち、耐性になる気がする。

 

また、読書は、自分自身を現実の世界から、本の世界の中に退避させることができる。どのような本を選ぶかに依るが、読書は、人間関係や組織のしがらみからいったん自分自身を解放し、一人静かに過ごすひとときを与えてくれる。

 

 「コスパ」「タイパ」など効率化が求められる時代の中で、あえて効率を求めない行為を選んでみることも大事だろう。

「分からない」ことを受けとめる余裕をもって、2026年も読書の経験を積んでいきたい。


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