「ぷかぷか」で働いているみんなのお昼ごはん(まかない):この日は、ビーフン、おひたし、私だけ特別にカフェのメニューに入っているミネストローネ!(みんなは卵スープでした)
■メンバーさんのお昼ごはん
「お昼、食べに来た!」
「ぷかぷかカフェ」の裏口から、メンバーのひとり、辻克博さんが元気な声で入ってきた。
他のメンバーさんも、午前中の仕事に区切りがついたタイミングで、カフェの裏口から順番にやってくる。
メンバーさんは、カフェの表の入り口からは入らない。「表の入り口はお客さん用。従業員は裏口」というルールを、きちんと守っているのだ。
メンバーさんのための奥の休憩室が満席になったので、私は、お客さんが座るテーブル席をお借りして、腰を掛けていた。
メンバーの荒井さんが来たので、「奥の休憩室はいっぱいだから、こっちに(お客さんの座るテーブルのほうに)一緒に座ろうよ」と声をかけてみたが、荒井さんは、両手で大きく「×(バツ!)」のサイン。
「お客さんの席だから、座りません。駄目です」の意味だ。「奥の休憩室がじきに空くのを待ちます。ルールはルールです」と、はっきり示された。
カフェの厨房には、お昼ご飯(まかない)が用意されていた。
この日のメニューは、ビーフン、おひたし、玉子のスープ。食べざかりの人も多いので、トーストも付いている。
「ぷかぷか」にお伺いするときは毎回、私も、皆さんと同じまかないメニューを頂く。
メンバーさんは自分が制作した鉄道模型の写真を携帯電話を使って見せてくれたり、テレビアニメのちびまる子ちゃんの話になったり、家族で行った旅行の話を聞かせてもらったり…。
お昼ごはんは、仕事をしているときの表情とはまた少し違うメンバーさんの表情を知ることができて、楽しい時間でもある。
■支える人のおかげで、変化が生まれる
この日のまかないを調理してくださったのは、スタッフの井上きよみさん。
井上さんは、カフェ&ベーカリー「ぷかぷか」が開店する前、準備の「パン教室」の頃から関わって、スタッフになった人だ。
井上さんには、ダウン症の娘さんがおり、娘さんは現在、25歳。店長の高崎明さんは、娘さんが養護学校のときの担任の先生だった。
井上さんによると、最初は高崎さんから娘さんに「今、どうしているの?。今度、パン屋を開店する予定だけど、働きに来る?」と声がかかったという。
しかし、井上さんの自宅からは「ぷかぷか」が遠いこともあり、娘さんは別の施設を選択。母親の井上さんが「ぷかぷか」で働くことになった。
「知的障害があっても、感情は普通にあります。メンバーさんの話しを聞いてあげたいという思いがありますね。私は自分の子どもが障害をもっているということがあって、メンバーさんに対して世間一般の人とは同じように捉えられないところがあります。『甘い』と言われてしまうかもしれないですけど、忙しいときにはできないこともあるんですけど、メンバーさんの話しを聞いてあげたいと思います」
井上さんは、静かに優しい口調で、ゆっくりと話す。
「ぷかぷか」では様々な出来事が起こる。当然、メンバーさんが不満をもったり、店長やスタッフさんから注意されたことに納得がいかない場面も出てくる。
そんな様子に気がついたとき、まず、「どうして、注意されることになったのか?」「なぜ、不満なのか?」と、メンバーさんの気持ちを聞いてあげたいと、井上さんは言う。
不満は、そのメンバーさんの成育歴や、それまでの経験してきたことが基盤になって出てくる感情だ。その部分をきちんと受けとめたいと考えているからだ。
「注意されたこと」「仕事で求められていること」に対して、「嫌だ」という感情だけで終わってしまっては、その人が注意されたことを改め、仕事の役割を担っていくことはできないだろう。
感情を整理して、「なぜ、注意されたのか」、「なぜ、その仕事を求められるのか」ということをきちんと受けとめることができれば、その後の改善につながるにちがいない。
言葉で言うのは簡単だが、こうしたことをサポートするのは、試行錯誤の連続だろうと想像する。
井上さんは、「もっと、メンバーさん一人ひとりをしっかり見て、サポートしていかなければいけないと感じています」と話す。
たとえば、材料の計量で、計量カップ一杯をすりきりではなく、山盛りにして計ってしまうメンバーさんがいる。「気をつけようね」とアドバイスして、しばらくはきちんとできている。しかし、ある程度の日数が経ってから計量をお願いすると、再び、山盛りで計ってしまう。
このようなメンバーさんに、どのタイミングで、どのように声をかけたら、きちんと仕事を進められるようになるか――。スタッフ同士が連携して、取り組んでいかなければいけない部分があると感じているという。
私が「ぷかぷか」に行くのは、ひと月に1回程度だ。
そのたびに、「こんなこともできるようになっている」「話すことがしっかりしている」と、メンバーさんそれぞれが成長し、変化している姿を見る。
しかし、前回の撮影日と、今回の撮影日の間の期間に、私が知らないさまざまな出来事が起こっているはずで、トラブルや失敗も少なくないだろうと想像する。
ひとつひとつの出来事を受けとめ、支えているスタッフがいるからこそ、メンバーさんの変化が生まれるのだと改めて思う。
「ぷかぷか」のお昼ごはん(まかない)は、美味しい。
メンバーの皆さんと一緒に頂くと、ゆったりとして、とても幸せな気持ちになる。
そんな雰囲気が生み出されるのも、メンバーさんを見守り、日々、試行錯誤しながらサポートしているスタッフさんたちのおかげといえる。
▼カフェ&ベーカリー「ぷかぷか」のホームページ http://pukapuka-pan.xsrv.jp/

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