写真:「ぷかぷかカフェ」の厨房でラスクづくりをしている横田恵美さん(左) と高木さん(右)。
◆蕾(つぼみ)のころ~「頑張らなければ、でも…」の戸惑い
「仕事は楽しいばかりじゃない、自分でちゃんと仕事をしないといけないって…。ぷかぷかは、前の作業所とは全然違って。前は座り作業で、刺繍とかしてて…。もう少し経ったら、違うことを言えたらいいと思います」
2010年6月。
カフェ&ベーカリー「ぷかぷか」がオープンしてから、まだ2カ月経つかどうかという頃。メンバーのひとり、横田恵美さんは、自分の仕事についてこんなふうに話していた。
「きちんと仕事をしなければいけない」という気持ちと、「でも、どうしたらいいのか分からない」という気持ちが同居しているような答え。
この頃の「ぷかぷか」は、店長の高崎さんも他のスタッフさんも、「パンを製造して、お店に並べて、販売する」という通常業務をこなすことに精一杯だった。
「ぷかぷか」の厨房にピリピリとした緊張感が漂っていたこともあり、障害のあるメンバーさんが厨房の中に入ることさえできないこともあった。
ゆったりした時間の流れのなかで、エプロンや棚のれん、カードをつくっていた以前の職場と、スタッフさんもメンバーさんもバタバタしている「ぷかぷか」とでは、仕事の内容も職場環境もまったく異なったにちがいない。
そんななかで、恵美さんは、「仕事は楽しいばかりじゃない」「時間が経ったら、違うことを言えたら」と自分自身の仕事や役割について考えていた。
私は、恵美さんについて、「もの静かに見えるが、芯はとてもしっかりした人」という印象を持っていた。
◆花は開く ~力を発揮して、人は輝く
2011年3月末。
「ぷかぷか」から徒歩ですぐ、団地の別棟1階にある「ぷかぷかカフェ」の厨房で、恵美さんはラスクの上にのせるクリームを作っていた。
この日は、恵美さんより年下、10代の女の子が実習に来ていた。
恵美さんは、実習生がボールに入れたクリームの混ぜる様子を、時折、声をかけながら見守っていた。
クリームが白くなるまでかき混ぜて仕上げるのには力も必要で、コツもある。最後は、恵美さん自身が混ぜて仕上げていた。
最近は、「ぷかぷか」の厨房に入り、パンの元種「ルバン種」をつくる作業を任されている。
メロンパンの皮の生地を作ったり、揚げたツイストに砂糖をまぶすこともある。「ぷかぷかカフェ」の厨房で、クッキーやラスクづくりを担当することもあるという。
恵美さんは、
「最初、ぷかぷかに入ったときは、まだ全然、右も左も分からなくて、どうしよう、どうしようという感じでした。今は、できているというか、一応楽しくできています。仕事は、自分から、今日はこれをやりますというのがあるんですけど、何もやることがなくなったときは聞いてやるようにしています。昔は、ずっと立っているだけで、何をやればいいんだろう?という感じでした」と、この1年を振り返る。
昨年秋ごろから、パンづくりや販売用のパンの袋詰めの作業をするときに、他のメンバーさんに作業の方法を教えている場面を見かけていたため、そうした役割を任されたのかと尋ねると、
「教えるように、頼まれてはいないです」と恵美さん。
「少しでも自分の知っていることがあれば、教えよう」と考えて、自発的に行動していたという。
これまで、人に教えた経験がなく、「人に伝わっているのかな、どうなのかなと思います」と話すが、自信のないことを人に教えることはできないだろう。
自分の仕事に手ごたえをつかみ、自信を持ち、さらに職場のなかでの自分の役割について、しっかり考えなければ、「何もすることが見つからないときには、スタッフに尋ねてする」「自分の知っていることは、他の人に教える」という行為には結びつかないと思う。
誰かに命じられたから、動きだしたのではない。
もともと、恵美さんのなかに備わっていた考える力、行動する力が、「ぷかぷか」で働くなかで、どんどん発揮されてきたのだと思う。
まるで、蕾(つぼみ)から花が開くように。
▼カフェ&ベーカリー「ぷかぷか」のホームページ http://pukapuka-pan.xsrv.jp/

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